住宅ローン借入時に、変動金利、固定金利の選択について悩まれる方は多いです。特に、2020年以降のコロナ禍により、この先の見通しの不安定さから、その選択は難しくなりました。この記事では、変動金利、固定金利の選択の前にまず、住宅ローンに使われる金利とはそもそも何なのか、そして、借り主がどういう状況なら変動金利、あるいは固定金利を選択すればいいのかを解説します。
目次
1.変動金利は日銀の政策金利、固定金利は長期金利が基準
変動金利とは、銀行が融資に問題がないと判断した信用力の高い企業に融資をする際に、期間1年以内の間、適用される金利です。これは日銀の政策金利(短期プライムレート)にほぼ連動しています。「ほぼ連動」と述べたのは、各銀行が金利を決めているためです。各銀行の変動金利に違いがあってもごくわずかであり、各銀行の変動金利を、1年を超える長期で俯瞰しても、急に大きく動くことがありません。日銀は経済をなるべく安定させたいと考えているため、自ら政策金利を急に大幅に変更しようとは考えないからです[注1] [注2]。
一方、固定金利は長期金利に基づいています。長期金利とは1年以上の融資を行う場合の最優遇金利のことで、債券市場に連動しています。長期金利の代表的なものに「新発10年国債利回り」があり、主に国内外の投資家が参加する市場取引で決定されます[注1]。そのため、長期金利は短期金利のように銀行が直接コントロールできるものではなく、短期金利と比べて、比較的急で大きく変動します。
つまり、住宅ローンの変動金利は、短期金利=日銀の金融政策の動向に、固定金利は、長期金利=市場参加者の金利見通しにそれぞれ影響を受けます。
2. 住宅ローン金利の変動、固定の選択で、支払総額や支払い計画の確かさが変わる
金利タイプには主に3つあります。変動金利の住宅ローンは変動金利型のタイプ、固定金利の住宅ローンは固定金利期間選択型と全期間固定金利型があります[注3]。
変動金利型、固定金利期間選択型は、変動、固定の違いはありますが、返済期間途中で適用される金利が変わるという点で共通しています。返済途中で適用される金利が変わるメリットは、借入れ後に金利が低下した場合、銀行への支払額が返済期間全体で減少することです。デメリットは、借入れ後に金利が上昇した場合、銀行への支払い額が返済期間全体で増加することです。そして借入れ当初に今後の景気の予想が必要になることから、返済計画が立てづらくなります[注3]。
全期間固定金利型とは金利が完済時までずっと変わらないタイプです。メリットは、上記とは反対に、借入れ後に金利が上昇しても、将来にわたり借入時の金利による返済額が確定し、返済計画が立てやすくなります。その代わり、借入れ後に金利が低下しても銀行への支払額は変わりません。[注3]
3. 住宅ローン金利の選択の基準は「支払い計画の立てやすさ」と、「支払総額はどちらが安くなるかの判断」
金利変動のリスクとは、主に金利が上がることです。金利が変動する住宅ローンを選ぶ場合は、金利が上がる場合でも、月々の支払いが可能かどうか、を考えておく必要があります。
住宅ローンは最長で35年返済し続けます。35年の間には、東日本大震災やコロナなどのように、想定外の事態が起こることが予想されます。
金利が変動する住宅ローンを選ぶ場合は、金利上昇の際でも諦めがつくかどうか、そして、今後のキャッシュの状況を予想し、期限までしっかり支払うことができるかどうかを考えてみましょう。もし、諦めがつかない、もしくは支払額が多くなる畏れがあっては気分が落ち着かない、と判断されたなら固定金利の住宅ローンを選んだほうが無難でしょう。
[注1]新生銀行:「金利上昇!そのとき、あなた住宅ローンはどうなる?」
[注2] 株式会社リクルート:住宅ローンの金利を左右する「短期プライムレート」とは?
[注3] 一般財団法人 住宅金融普及協会:金利について
https://www.sumai-info.com/information/loan_basis_rate.html