日本の予防医療の現実

日本の予防医療の現実

 筆者は40歳を超えてから以前よりも食事を意識するようになりました。甘いもの、しょっぱいもの、油っこいものは控えめにし、腹8分で食事を抑えるなどしています。なぜなら少しでも判断能力を維持したまま長生きしたいからです。

 普段テレビやネットの情報に触れていると、30代、40代という若い年齢であるにも関わらず、病気で命を落としてしまった方々のことを見聞きすることは珍しいことではありません。ガンを初めとする難病は一度かかってしまうとその人の肉体、精神をとことん打ちのめすことは、患者の方々の画像や映像からも明白なことです。

 人は遅かれ早かれいずれ死にます。しかし、「もう少し、健康に気をつけて日々を過ごせばよかった。そうすればこんなに早く死ぬことはなかった。」という後悔をしながら死ぬのはなるべく避けたいと思いませんか。多くの人はやりたいことをやるのに、それなりの時間を必要とします。

 予防医療は、健康である期間をなるべく長くし、やりたいことをやる時間を確保していくことに貢献できます。予防医療とは、医療を健康維持・増進、病気の予防という視点から包括的に捉え直し、私たち一人ひとりが今、何をするべきかという行動指針を示してくれるものです[注1]

 これまで、日本では予防医療に興味がある医師が少なく[注2]、国民にも正しい予防医療の知識が行き渡りにくい状況が続いていたようです。企業や自治体による健康診断がありますが、私自身の経験を振り返ってみても、医師が何か気になる数値があれば、受診者にそのことを伝えるくらいであり、予防医療というには心もとないものです。もし予防医療をしっかり行っていれば、寿命を少なからず伸ばすことができた方がいらっしゃったかも知れません。

 病気を予防したとしても、病気になるタイミングが後ずれしただけで、最終的には予防しなかった場合と同程度の医療費がかかるのではないか、という意見もあるようですが[注2]、これは極論を言えば、「病気になって早く死ぬに越したことはない。」と言っているのと同じことであり、このような意見に同調する人はほぼいないでしょう。

 これからの時代は、病気になってしまったとしても、どうにか生き延び、ある程度の思考能力や判断能力を維持することができれば、テクノロジーや高度医療技術などにより、何らかの生産活動を行い続けることは可能なのではないでしょうか。また予防医療によって高齢まで生きた方と、まだ働き盛りの中年ぐらいの方が、仮に生命を脅かす同じ病気に疾患したとして、同程度の高度の医療処置を施すことは現実的ではありません[注2]

 ホリエモンこと堀江貴文氏は予防医療普及協会の立ち上げに携わるなどし、予防医療に造詣が深いのですが、「予防に注力していた人たちが多くの命を救ってきたにも拘らず、それが本流じゃないのは本当に不思議。」とおっしゃっています[注3]

 予防医療が広がらないのは、日本の医療制度の影響もあるようですが、ここでは現段階において予防医療に近いことを行っている団体を紹介します。

 まず上記の堀江氏が立ち上げに携わった予防医療普及協会による、「予防医療オンラインサロンYOBO-LABO」が挙げられます。

 このサロンは、会員制コミュニティで、医療関係者の他、一般の方も交えて交流し、正しい知識を身につけ、どのようにすれば予防医療が普及するのか話し合っていくことで、新しい価値を創造し築き上げていく場を提供する、という趣旨のことを謳っています [注4]

あとは予防医療研究協会による「予防医療大学院」が挙げられます。

こちらは現役の医師たちが主に集まり、専門家ではない私達が抱えている自分の健康や医療に対しての悩みや疑問などを、専門家に伝えることができるオンラインスクールです。

 受講者はこのオンラインスクールに登録するだけで、大学や大学院のように自分が選びたい授業をその都度選択し、その分野のエキスパートから正しい知識を学ぶことや、専門家に質問して回答を得ることが可能です。またインターネット検索では得られない情報や世界の新しい論文などを題材として議論していきます[注5]

 YOBO-LABOは専門知識だけではなく、予防医療に興味関心がある方々との交流を深めたい方向けで、予防医療大学院は、とことん専門家に質問したいという方に向いているという印象です。

 どうしてもお金をかけたくないという方は、個人でネットや書籍から情報を得るという、従来の方法もあるでしょう。

 ただこの方法は、筆者の個人的な経験からも言えることなのですが、自分が真っ先に目についた情報、どうしても気になる情報を集中的にあさってしまい、得られる知識が偏りがちになるという問題や、医学的な根拠が本当にあるものかどうかという判断が難しいという問題があります。

 そのため、自分で情報を集める場合は、初めから情報を信じすぎないこと、そして、ある程度の学術的な根拠を判断するための目を養っておくことが大切です[注6]

 また別の論点の話になりますが、日本に本格的に予防医療を導入すると、発症後に治療を始めるよりも医療費を抑えられ、仮に発症しても治療期間が短くなる場合が多いことから、大局的には予防医療を本格的に日本に導入するかどうかは、社会保障制度の問題でもあります[注7]。こういった予防医療を取りまく社会の課題に問題意識を持つことも、予防医療の第一歩と言えそうです。

[注1]MSD製薬:「予防医療とは」
https://www.yobou-iryou.jp/about.xhtml

[注2]東洋経済オンライン:「日本人は医療費増大の本質をわかっていない」
https://toyokeizai.net/articles/-/297988?page=4

[注3]DIAMOND online:「堀江貴文が迫る、日本医療が『治療から予防』へ舵を切れない理由」
https://diamond.jp/articles/-/120093

[注4] 予防医療オンラインサロン:YOBO-LABO
 https://lounge.dmm.com/detail/1025/index/

[注5]PRTIMES:現役の医師らによる専門知識がまとめて学べる日本初!オンラインスクール「予防医療大学院」開校!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000056329.html

[注6]具体的な方法は以下の資料に詳しく掲載されています。
国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部 健康食品情報研究室:「健康食品の基礎知識」
その情報は「確かな情報」ですか? (Ver.210415)
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail771.html

[注7]日本経済新聞社:「新聞予防医療とは ―医療費抑制へ生活習慣病など発症防ぐ―」
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO49333390T00C19A9EA2000/

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