なぜリアルタイムな財務の把握が大切なのか?

なぜリアルタイムな財務の把握が大切なのか?

2021年2月7日

1、会計の経営における位置づけ

 先日ITの活用セミナーを受講してきました。

 講師は大手通信機器メーカーの出身で、ITの活用を指南するコンサルの方でした。

 前半は、事業の効果的な戦略の立て方、後半は現在のクラウドサービスの効果的な使い方、というのが主な内容です。

 少し残念だったことに、私の興味があった経理効率化の話はなく、せめてと思い最後に講師の方に「ERP、RPAを実践的に使う方法、経理効率化ソフトについて知りたい」、というような質問をしましたが、「ERPは大企業向け、RPAは使用している会社はありますが、コンサルの顧客の情報を教えるわけにはいきません。経理効率化ソフトは、それだけでは商売にならないと思います。」という、私としてはモヤモヤ感が残る回答でした。

 若干否定的なこの回答に、私は多分この方はこの分野のコンサルはほとんど受けないのだろうな、と思いましたし、会計についてほとんど知らないのだろうなと感じました。

 有名どころでは稲盛和夫氏の「アメーバ会計」や、最近のビジネス系YouTuberの動画を見ても会計の重要性についてはほぼ疑いの余地がありません。そして優秀な経営者ほど「今、現在の財務状況を知りたい」とおっしゃいます。

 数ヶ月先の投資(仕入れも含む)がどの程度可能なのか知りたいからです。

 私も人間である以上偉そうなことはいえませんが、どうもITの世界には(税理士業界もそうでしたが)自分の専門分野が万能薬であるかのように錯覚しがちな方をよく目にします。

 「じゃあ、あなたは会計至上主義者じゃないのか」と言われそうですが、私の背景を述べると私は元々会計が好きではなく、簿記なんて初めてみたときは「やりたくないな」と思っていました。まるで親に引きづられるようにして疑問を感じながら、細々、惰性でなんだかんだで現在まで会計を勉強してきた人間です。

 「行動経済学」「哲学」などの社会系統の学問に高校時代から興味があった私にとって苦行に近いものがありました。

 そういう私の背景を踏まえて話しますが、やっぱり会計は重要だと思います。

2、なぜ会計が必要なのか

 その答えは稲盛和夫氏の本を読んでくれといえば、なんとも味気ないので、私がある会社で経理をやっていた2008年3月、東京の管理会計セミナーに行かせて頂き、その数日後会社に提出したレポートを掲載することにします。セミナーの内容に「稲盛和夫の実学」を参考にして書いたものです。

 今回、管理会計講座、キャッシュフロー講座を受けさせていただきましたが、この2つを受けようと思ったのは、日々、仕事をしていて、そして新聞や書籍、雑誌などを読んでいて、この2つはこれからの経営に必要なものだと感じたからです。あと、会計を基本にした経営戦略に興味があり、そこから、営業、製造、出荷、配送、総務など全ての部門にどのような、働きかけができるのか、少しでもヒントがえられればと思ったからです。

 管理会計は、どこがよくて、どこが悪いのか、だったらこれからどうするべきかということを、法律にしばられず、自分たちが、公平・適正だと思う方法で表現できます。

 例えば減価償却を行うときの実際の耐用年数の長さ、固定費、変動費、直接費、間接費を実際はどうなのかということを考慮した原価計算など、実態に即した数字をだすことにより、未来はどうするべきかということがみえてきます。

 そのような実態に即した計算方法を採ることで、A製品の製造、販売でどれだけの採算がとれているのかどうか、会社の経営状態や市場の状況から、それは製造量を増やすべきものなのか、単価を上げるべきものなのか、仕入れるものを見直すべきものなのか、宣伝などの販売促進に力をいれるべきものなのか、商品そのものを改良すべきものなのか、またある設備投資は投資をするだけの効果かがあるのかどうかなどを考えるにあたり、会社経営の戦略シナリオの一番はじめにくるものが会計です。 

 飛行機を目的地まで飛ばすには、燃料がどれくらいあるのか、今どんな天候で、どれくらいの風速で、高度はどれくらいなのか、速度はどれくらいがいいのか、飛行機の性能はどうなのかを考慮しなければならないのと同じです。 

 経営戦略に有効な公式としては、売上=固定費+利益/1-変動費率、これを変形させた販売数量=固定費+利益/販売価格-単位当り変動費といったものがあり、製品別にこの公式をあてはめていくという方法があります。これは実際MD(マーチャンダイザー)がつかっているものだそうです。         

この公式を使うためには製品別にある程度正確な費用配分をしていくことが必要になってくるのですが、その方法はこれまでは操業度基準(作業時間、機械稼動時間等)を用いることが多かったのが、近年では活動基準原価計算というものがでてきました。時間ではなく工程数、段取り回数など製品ごとの手間暇の大きさに応じて、費用を負担させるというものです。また工場の能力をこえそうなときに、どの仕事を優先すべきかを判断するためにスループット会計というのもあり、原価計算そのものも変化しているようです。

 実際の原価計算処理についてはまだまだ勉強不足なので、これから身につけていこうと思っています。

 キャッシュフローの考え方は、貸借対照表、損益計算書の数字はどうあれ、手元に現金さえあれば、商売は続けることができ、手元にある現金の額こそが、一番の安全な経営の指標であるということだと思います。飛行機の例であれば燃料があるかぎり、飛行機は飛び続けることができるというのと同じです。

 貸借対照表、損益計算書は発生主義の考え方に基づいてつくられているので、利益の金額と手元に残っている現金の金額は一致しないものです。利益の金額から直接法、または間接法によって手元にある金額までもっていくのかキャッシュフロー計算そのものの目的なのですが、その過程で利益が増減の要因まで、書き出してつきとめ、来期の経営戦略につなげることこそが、経営におけるキャッシュフロー計算の一番の目的だと思います。例えば今期にそこそこ利益がでているのに、現金が増えていないとすれば、利益以上に資産を増やしすぎたのか、あるいは負債を減らしすぎたのかなど原因を見極めることです。その上で今後、どうしても現金が必要なことがあるのならば、余分な在庫をあまりもたないようにする、借入れ期間延長をしてもらうなどして、現金を増やすことに努めるということが必要になってくると思います。

 管理会計、キャッシュフローはともに、正当な利益をどこからだすのか、企業存続、そして発展のための源となるキャッシュをどうやって潤沢にだすのかという、これからの経営にとって必要なものだと感じます。

3、この話がわかる人がどれくらいいるのか。

 いや、あの別に威張るわけではないのですが、今まで会計勉強したことがない人にとっては、以上のような文章を読まされても分からないと思います。当然、私にも、化学やプログラミングなどわからない分野の話なんていくらでもあります。とりあえずここではイメージで、会計とは、「飛行機を目的地まで飛ばすには、燃料がどれくらいあるのか、今どんな天候で、どれくらいの風速で、高度はどれくらいなのか、速度はどれくらいがいいのか、飛行機の性能はどうなのか」を判断するための計測器、客観的資料だということを掴んで戴ければいいです。

人間はそれぞれ好きな分野、得意分野、考え方のくせがありますが、そういう自分を一段上から俯瞰して、総合的な判断ができるよう、自分を含め皆さんで努力していきましょう。

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